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医療統計学:平均の使い分け
医療統計学、医療経済学、数学のつぼをたとえ話でわかりやすく解説
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平均の使い分け
一口に平均といっても、算術平均、幾何平均、調和平均などがありますが、どのように使い分ければよいでしょうか?
平均値、中央値(メディアン)、最頻値(モード)のような、データの分布の位置を示す統計測度を、日本では代表値と呼ぶこともあります。
英語圏では中心傾向の測度とされていることが多いようです。
平均値の使い分けは、この中心傾向ということから考えるとわかりやすくなります。
正規分布のような、左右対称の分布では、平均値はまさに分布の中央にきます。
ところが、大部分の値は小さいほうに偏り、少数の大きな値があるような分布、つまり分布の形状が高い得点のほうに裾野が広がった、正の歪度をもった分布では、算術平均は大きい値に引きずられて、分布の中心よりも高いところにきてしまいます。
社員の大半が比較的低い給料で働き、少人数の役員の給与た著しく高い企業での年収の算術平均は、大部分の人の年収より高いことになってしまいます。
このとき、たとえば、年収の対数をとると左右対称に近づくとか、それでも足りないときには、逆数をとると、(値の高低は逆転してしまいますが)左右対称になるといったことがあります。
対数の平均を指数変換で戻したものが幾何平均、逆数の平均の逆数が調和平均で、それぞれ偏った分布において、データの中央付近に来ること、つまり中央値に近づくことが確かめられます。
もう一つ、偏りの大きい分布では、極端な値の出現が、外れ値と同じ効果をもたらし、平均値の推定を著しく不安定にしますから、この意味でも分布を対称に近づけてから平均を出す幾何平均や調和平均が好ましいといえます。
比尺度でないと幾何平均と調和平均は使えない
しかし、心理学の研究では、反応時間のような物理的測定値が得られるような実験データを除いては、幾何平均や調和平均が使われる可能性は少ないと思われます。
幾何平均も調和平均も絶対的な原点があって、かつ、正の値ばかりからなるデータでないと、使うことができないからです。
質問紙による尺度やテストの得点などは、自然な原点の存在しない間隔尺度ですから、これらについて幾何平均や調和平均を計算することは誤りです。
算術平均は、データの原点を移動したとき、その分だけ値が変わりますが、幾何平均や調和平均では、その変化が一定でなく、原点の取り方によって相互関係が変わってしまいます。
ですから、幾何平均や調和平均を使う前に、まずはそのデータに自然な原点があるかどうかを確かめるのが先決でしょう。
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