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医療統計学:標準得点と偏差値
医療統計学、医療経済学、数学のつぼをたとえ話でわかりやすく解説
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標準得点と偏差値
標準得点を用いることの意味は何でしょうか?
ある中学生の期末テストの成績は、英語が70点、数学が65点でした。
この試験結果から、この中学生は英語のほうが数学よりも得意であるといえるでしょうか。
答えはノーです。
なぜなら、平均点が異なれば、得点の意味も異なるからです。
たとえば、この期末テストでは、英語の平均点が65点、数学の平均が50点だったとしましょう。
つまり、数学の得点は平均点より15点も高く、英語の得点は平均点よりも5点しか高くなかったのです。
したがって、この中学生は数学のほうが英語よりも得意である可能性が高いと考えられます。
しかし、標準偏差を算出してみなければ、まだこのような結論を下すことはできません。
なぜなら、標準偏差が異なれば、平均値からの差の意味も異なるからです。
たとえば、数学の標準偏差は20点、英語の標準偏差は2点だったとしましょう。
この場合、英語の得点の平均値からの5点の差は、標準偏差の2.5倍の大きさです。
これに対して数学の得点の平均値からの15点の差は標準偏差の0.75倍にすぎません。
したがって、この中学生は英語のほうが数学よりも得意であると考えられます。
標準得点による相対的位置の推定
以上の説明から明らかなように、平均値や標準偏差の異なる尺度上の得点を同列に比較することはできません。
そこで、その比較を可能にするためには、平均値や標準偏差が特定の値になるように、変数の尺度(原点および単位)を変換する必要があります。
この変数変換が標準化であり、変換された新しい尺度上の得点を標準得点とよびます。
データの標準化のためには、一般に次の変換式が用いられます。
すなわち、標準得点とは、各得点が平均値に比べて標準偏差の何倍の大きさであるかを示す値なのです。
Zi=(Xi−平均値)/標準偏差
この式で変換された標準得点は、必ず平均値が0、標準偏差が1になります。
そして、変換前の得点の分布が正規分布であれば、標準得点の分布も正規分布にしたがいます。
なぜなら、1次関数式によって得点を変換した場合(このような変換を線形変換といいます)、変換によって平均値や標準偏差は変化しますが、分布の型は変化しないからです。
したがって、ある得点の標準得点を求め、標準正規分布における確率分布の表を調べれば、その得点の集団の中での相対的位置を推定することができます。
たとえば、上述の英語と数学の得点の標準得点は、それぞれZ=2.5、とZ=0.75になります。
したがって、試験成績の分布が正規分布にしたがっているとするならばあ、英語の得点は上位0.6%、数学の得点は上位22.7%の得点であると推定することができ、この中学生は英語のほうが数学よりも得意であると考えられます。
ただし、このような比較が可能であるのは、複数のテストが同一の集団に実施された場合に限ります。また、極端な外れ値が存在する場合や分布が極端に歪んでいるような場合には、相対位置の推定が不正確になることに注意する必要があります。
ところで、教育現場では、偏差値のほうが標準得点より多く用いられます。
偏差値とは、標準得点の10倍に50を加えたものです(平均値は50、標準偏差は10になります)。
というのは、標準得点は半分の値がマイナスになったり、分布の範囲が狭かったりするため、100点満点を基準とする教育現場の習慣になじまないからです。
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