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医療統計学:差がないことの実証
医療統計学、医療経済学、数学のつぼをたとえ話でわかりやすく解説
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差がないことの実証
仮説検定で、有意差がないという結果を得ることで、差がないことを実証したことになるでしょうか?
差がないことを実証したことにはなりません。
統計学における検定では、
@差がないという帰無仮説と差があるという対立仮説をたて、
Aこれらの仮説を吟味するための統計量を決め、
B有意水準を設定し(通常5%あるいは1%)、
C実験や調査によってデータを収集し(母集団から標本を無作為に抽出することを意味する)、
D帰無仮説の下でAで決めた統計量が実験や調査で得られた値以上に対立仮説を支持する方向の値をとる確率(p値とよばれる)を求め、
Eその確率があらかじめ設定した有意水準よりも小さければ帰無仮説を棄却して「有意差がある」という判断を下し、
F逆に有意水準よりも大きければ帰無仮説を棄却できないとして「有意差はない」という判断を下します。
さて、ここで注意しなければならないことは、帰無仮説を棄却できなかったときに下す「有意差がない」という判断は、「等しい」ことを意味しているわけではないことです。
実験や調査で得られた条件(群)の間の差は偶然でも(つまり標本抽出の誤差によっても)十分に起こりうる程度の差であるとみなし、統計的(確率論的)に意味のある差ではないという判断を下すにすぎないのです。
したがって、有意差がみられなかったからといって、差がないことを実証したことにはならないのです。
言い換えれば、統計的検定では、等しいことを実証することはできません。
帰無仮説は、あくまでも棄却することを前提にして立てた帰無仮説であり、研究者が実証するべき研究仮説は「差がある」という対立仮説のほうなのです。
このように、帰無仮説を棄却できなかった場合に下す判断が少しあいまいになるところが、統計的検定の弱点といえるかもしれません。
検定力と標本の大きさ
A群とB群に差がないとう帰無仮説を設定した場合、帰無仮説を棄却できなければ、「A群とB群には有意差がない」という判断を下します。
しかし、本当は両条件の間には差があるのかもしれません。
その場合には間違った判断を下したことになり、この間違いの確率のことを第二種の誤り(β)、その補数(1−β)を検定力(正しく棄却する確率)といいます。
さて、一般に標本の大きさが大きくなると検定力が高まります。
つまり、標本の大きさが大きくなると検定力が高まります。つまり、標本の大きさが大きくなると帰無仮説が棄却され、「有意差あり」の判断が下されやすくなります。
質問の例の場合にも標本の大きさ(各条件の被験者数)を大きくすれば、両条件の間に有意差が得られるかもしれません。
同様に標本の大きさを大きくすれば、しし座の女性とおとめ座の女性の平均身長が1mm違いでも「有意差あり」という検定結果になるかもしれません。
しかし、1mmの違いなど実際にはほとんど「無意味」といってよいでしょう。
このことからも明らかなように、有意水準は差の大きさを直接的に示しているわけではありません。
したがって、信頼区間や相関比などを算出することによって、差の大きさを推定しておくのが望ましいでしょう。
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