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医療統計学的論文の読み方:最良・最悪・ありえそうなケース
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医療統計学的論文の読み方:最良・最悪・ありえそうなケース
欠陥が,研究の知見にどんな作用をするかを判断することは,困難である場合が多いです。
多くの欠陥に対処するための有用な方法は,最良のケース(best case)、最悪のケー ス(worst case)およびありえそうなケース(likely case)、それぞれのシナリオを提示して可能性を考えてみることです。
長期治療を受けている高齢患者を対象とした、識字レベルに関する郵送法による質問紙調査の例を考えてみましょう。
調査の結果,調査対象者の90%は識字得点が高かったが,回答率はたった50%であったと仮定しましょう。
低い回答率は,バイアスをもたらすことがあります。
最悪のケースは,無回答者全員が読み書きができないというものです。
読み書きができないということが無回答の理由になります。この場合,識字得点が高い人の真の比率はたった45%です。
回答しなかった対象者のすべてが極めて識字能力が高かったというケースも考えられますが,これもまずありえません。
最もありえそうなケースは.無回答の多くは識字能力の欠損以外の理由によりますが,無回答の主たる原因の一つは読字困難であるというケースです。
無回答の半分が識字能力の低さに起因するとしたら、その場合識字能力の高い人の真の比率は67.5%となるでしょう。
実際には50%の人が回答しなかった理由は分かりません。
しかし、.上記のように複数のシナリオを考えて推測を行なうことにより,バイアスのもたらしうる結果の目安が得られます。
こうした推測により,研究結果を退けるべきか、あるいは十分な注意を払いつつ自分たちの知識に加えるべきかがはっきりします。
この例では.識字能力の高い人の真の比率は45%と90%の間にあるから,90%という結果は安定したものとは思われません。
45%という数字も正しくはないだろうが,識字能力が低いことは無回答に大きく影響していると思われます。
よって,90%という研究結果はおそらく誤っています。
研究の結論に対して欠陥がどのような影響を及ぼすかを判断するためには欠損がもたらす影響の大きさを見積もることが必要です。
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