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医療統計学的論文の読み方:コホート研究の吟味
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医療統計学的論文の読み方:コホート研究の吟味
コホート研究にとって重要な観点は、簡潔な本質的な問いと、より詳細な具体的な問いに分けられます。
各観点について説明を行ない,最後にこれらの問いのリストと標準的な問いのリストを結合します。
結合されたリス卜はコホート研究を批判的に吟味するための完全な手引きを提供しています。
コホート研究は,「患者がどうなるか」を判断するために,時間軸で患者を追跡調査します。
研究目的は、病気の自然な時間的経過を追跡調査すること.あるいは何らかの医学的介入が予期せぬ結果を引き起こさなかったかどうかを知ることです。
したがって,コホート研究を吟味するにあたっては,以下の問いによって、患者群および研究対象のアウトカムに焦点を当てることとなります。
正確なところ誰を研究しているのか
統制群を用いているか、用いるべきだったか
追跡調査はどのくらい適切か
具体的な問いは,研究対象のグループの性質と追跡調査の詳細に焦点を当てます。
また、誤った結論を導くような要因も探ります。
@デザインは,述べられた目的に照らして適切か
A曝露/介入は正確に測定されているか
B適切なアウトカムの尺度が見落とされていないか
C分析は時間の経過を考慮に入れているか
Dその他,観察されたアウトカムに影響を与えたものはあるか
正確なところ.誰を研究しているのでしょうか。
患者に起こるできごとは,患者の特徴に大きく依存していますので,研究対象のグループの特徴は重要です。
患者に生じる臨床的できごと(clinical events)の性質と数は,病気の期間と重さ、受けた介入の程度,その他もろもろの医療上の条件の有無によって影響されます。
したがって読者は知見の解釈にあたり,誰を研究したのかを明確に認識することによって、「これは信ずるべき結果なのだろうか」 と問うことができます。
また,知見を,他の患者群に一般化できる程度は研究対象によって決まってきます。
したがって、患者の出所がどこなのか、たとえば專門治療機関から得られたのか,あるいは一般開業医から得られたのかを、明記しなければなりません。
病気の定義や曝露の性質といった,研究に参加するための要件の定義も示さなければなりません。
最後に、研究対象者が何らかの抽出方法(たとえば,一般開業医を選んでからその医師の患者サンプルを選ぶという方法)で得られたのなら,その抽出方法を詳細に検討すべきです。
この検討により,サンプルが.より広範なグループを代表できそうかどうかが分かるのです。
統制群を用いているか,用いるべきだったか
曝露群についてのみデータを収集したのでは、曝露/介入について知りたい追跡研究の結果を解釈することは容易ではありません。
公害が,がんにもたらすリスクを評価したいとしましょう。
がんは、自然にも生じるから,真の問いは公害に曝された対象者のほうががんの頻度が増加したかどうかです。
この問いは,曝露群と曝露を除いたすべての点で曝露群と類似している統制群と比較することによってのみ答えられます。
決定的な違いは、統制群の適切さに関する「その統制群は公平な比較を可能とするか」という問いです。
追跡調査はどのくらい適切か
追跡研究の過程では、研究から患者が姿を消してしまう機会が少なからずあります。
たとえば,結婚,死亡,転出,あるいは長期滞在型病院への入院といった理由で,患者は追跡できなくなります。
追跡不能となった患者は、追跡可能なまま残っている患者とは異なっています。
追跡不能となった者の数が大きければ大きいほど,バイアスの可能性も大きくなります。
したがって,鍵となる問いは,「欠損はどのくらい大きいか」「研究の条件を考慮に入れると,この欠損はどの程度結果に影響するか」です。
追跡調査についてもう一点重要なのは、アウトカムの測定の仕方です。
死亡やがんの診断のような分かりやすいできごとは、公的記録に記載されるから、この記録を用いて測定すればよいわけです。
呼吸器疾患の呼吸音や血漿中クレアチンといった病状の生理学的生化学的測定も、客観的な測定尺度です。
しかし.たとえば.診断を行なうにあたり臨床的判断が用いられる場合には、間違いが生じる可能性があります。
同様に患者との面接からアウトカムを得る場合にも、質問の仕方すなわち詳しく掘り下げて質問するか、遠慮して簡単に済ませてしまうかによって得られる回答が影齊を受けます。
したがって「アウトカムデータを入手する方法が,結果を左右していないか」を問うべきです。
そのためには、データ収集においては研究を行なう者が、一人ひとりの研究対象者がどちらの群に属するかは知らないということも重要です。
そうでないと,バイアスが生じうるからです。
研究終了後に,追跡期間の長さを検討し、重要なできごとを検出するのに十分な長さであったのかどうかを明らかにすべきです。
この指摘は、できごとが一つも観察されなかっ た研究にとって,とりわけ重要です。
追跡調査に最短、どのくらいの期間を要するかは、研究対象のできごとの性質によります。
たとえば,日帰り入院手術,退院後の痛みと不快感についての研究なら,2-3週間の追跡調査で十分です。
しかし,新しい治療法に関連する有害なできごとを検出することが目的なら,はるかに長い追跡期間が必要です。
副作用が発現するのに数年間もかかるかもしれません。
さらに,発生までに何年もかかる,がんのような病気に関心がある場合には、一定期間の追跡調査が必要です。
「関心のあるできごとが発生するまで,どのくらい長い期間がかかるか」と問うべきです。
追跡期間は,発生に要すると予測される期間よりも、十分に長くとらなければなりません。
デザインは述べられた目的に照らして適切か・曝露/介入は正確に測定されているか
適切なアウトカムの尺度が見落とされていないか
分析は時間の経過を考慮に入れているか
観察されたアウトカムに影響を与えたものはあるか
デザインは述べられた目的に照らして適切か
コホート研究は,「次に何が起きるか」という形式の問いに答えるために用いられます。
よって、コホート研究は、病気の予後を研究するために選択すべき研究手法です。
一方,有害な可能性がある物質への曝露の結果を知るためにも用いられます。
一般に,コホート研究は,因果性(たとえば,ある曝露が特定の病気を引き起こすかどうか)を調ベるために用いられます。
ただし,コホート研究は,因果性に関する問いに答えるための最良の方法ではなく,この問いに答えるには,臨床試験のほうが好ましいです。
とはいえ,有害な可能性があるものに,人を曝露する臨床試験は明らかに非倫理的です。
したがってこのような場合には,臨床試験ではなく,コホート研究を欠点を認識しつつ用います。
コホート研究は,治療効果の評価には不適切です。
受けた治療が異なる患者のグループをいくつか見つけることはよくあるので,グループ同士のアウトカムを比較したいと考えるのは自然です。
たとえば,根治手術を受けた患者のアウトカムと,同じ症状だが切除を行なわない治療を受けた患者のアウトカムを比較するという研究です。
しかし,手術を受けるのにはそれなりの臨床上の理由があることが多いです。
おそらくより重病な患者ほど,より根治的な治療の対象です。
よって,手術選択の理由が何であろうとも,比較される2群は,治療を受ける前から異なっていると思われます。
つまり,アウトカムの違いを,治療の性質の違いに帰すことはできません。
アウトカムの違いは、各治療への患者の割り当て方によって容易に生じるからです。
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