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医療統計学的論文の読み方:サーベイを批判的に吟味する

 

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医療統計学的論文の読み方:サーベイを批判的に吟味する

 


サーベイは簡単に実施できるので広く用いられている、あるいは広く誤用されているとさえ言えるでしょう。

 

サーベイは,対象者のグループつまり,患者,医療専門職、一般的な母集団のメンバーといった,対象者のグループを特定することから始まります。

 

データは,一人ひとりの対象者について,質問紙法や面接法によって収集されることが多いです。

 

サーベイは,研究の直接的な対象者よりも広範な集団について,一般化した言明を行なうために用いられます。

 

こうした一般化が妥当かどうかを吟味するのが,サーベイに関す る本質的な吟味の中核です。

 

誰を研究の対象としているか、サンプルをどうやって入手しているか、回答率はどれくらいか、といった具体的な問いも,一般化の妥当性に関係があります。

 

しかし、主たる関心は,サーベイのデザインと解釈が陥りがちな落とし穴にあります。

 

デザインは,述べられている目的に照らして適切か、性急に行なわれた形跡はあるか、選択バイアスはどのように生じているか、思いがけない結果ではなかったか、結果は一般化できるか、などの本質的な問いを含んでいます。

 

また、サーベイで得られた知見の解釈は、当然のことながら誰が研究の対象であるかに依存します。

 

サンプル収集の妥当性

 

サンプルの出所は,結果が一般的に当てはまるか,あるいは極めて限定的なグループにしか当てはまらないかを左右します。

 

サンブルを選択する際の(年齢、性別、病気の深刻度といった)基準は,それらが知見にどのような影響を与えているかを知るために丁寧に検討するべきです。

 

サンプルの出所である母集団を明確に記述することで、サンプル抽出の方法に問題があるかどうかが評価できます。

 

サンプル収集の方法は,知見の妥当性にとって,決定的に重要です。

 

「手近な」対象者のサンプルを用いている研究もあります。

 

容易に入手できるという理由で対象者をサンプルに含めているわけですが,彼らを入手しやすくしている要因自体が彼らを代表的なサンプルではなくしている可能性があるという問題を無視しています。

 

個人的ケースシリーズ法(personal case-series)、たとえば,特定の病院で治療を受けた患者たちは.このタイプの方法です。

 

ある期間に診察を受けたすべての患者がサンプルに含まれるのならば、そのサンプルは包括的であると考えられるかもしれません。

 

しかしながら,多くの選択要因が,患者が医療専門職の診察を受けるかどうかを決定しています。

 

診療所の門をくぐらない患者は,いつもたくさんいます。

 

サンプルを入手するプロセスは厳格でなければならず,適切に記述されなければなりません。

 

研究対象としての要件を満たす人はすべて、サンプルに選ばれる機会を等しくもたなければなりません。

 

それゆえ、サンプルとなりうる全対象者の何らかのリストと,サンプルを抜き出すためのしくみが必要です。

 

一部の対象者集団を見過ごすような場合は、サンプル抽出方法に必ず問題があります。

 

この問題の大きさは,見過ごされた対象者が何人いるか,見過ごされた対象者とサンプルに含まれた対象者がどれほど異なっているかに依存します。

 

回答率はどれくらいか

 

サーベイでは、接触できなかったり、参加を拒否したりする対象者がたくさんいます。

 

回答バイアスをもたらす可能性があるからです。

 

回答しなかった対象者は、回答した対象者と系統的に異なっていることが少なくありません。

 

引越しをした人や長期入院をした人は欠損となりやすいですし,海外に移住した人や死亡した人は欠損となることが確実です。

 

また、読解力のない対象者や,質問紙に記入すること(または面接を受けること)を嫌がる対象者や調査テーマについて個人的に何らかの反感を抱いている対象者からは,情報を得られないでしょう。

 

接触を難しくしている原因こそが,接触できなかった人と接触できた人との違いをもたらしています。

 

したがって,研究を行なったら,「こんな人が欠損しそうか」そして「この欠損は結果に対してどんな影響をもつか」と問うべきです。

 

無回答者の比率が大きくなるほど、それがもたらすバイアスも大きくなります。

 

何パーセントの回答率なら許容範囲であると決めてくれるような魔法の決まりはありません。

 

基準となる回答率を探したりせずに、研究の知見と,無回答の大きさとその理由を突き合わせて精査してみるべきです。

 

知りたいのは,知見が無回答によってどの程度の影響を受けているかです。

 

回答率を示さない研究やほぼ完璧な回答率であったと主張している研究は、疑ってかかるべきです。

 

対象者に答えを強要されているような極めて例外的な状況でない限り、.回答率はつねに100%より小さくなります。

 

デザインは述べられている目的に照らして適切か

 

サーベイから得たエビデンスは、とりわけ薄弱であると考えられています。

 

サーベイは、何が起きているか?たとえば,現在どのように治療が提供されているか、患者はその運営に満足しているか?を記述することはできます。

 

現在治療がどのように組織され、どんな結果をもたらしているかを表現するには役立ちます。

 

しかし,サーベイは,出来事が今起きているような形で起きているのかの説明には適用できません。

 

特に,ある形態の治療が他の形態の治療よりも効果的であるかどうかの評価には用いることができません。

 

サーベイの吟味にあたっては,その研究の目的を達成するには,サーベイ以外の研究方法のほうが優れているのではないかと考えてみるのがよいでしょう。

 

性急に行なわれた形跡はあるか

 

サーベイの問題点の一つは、研究したいことが明確になっていなくても,非常に簡単に行なえてしまうというこ とです。

 

だから,サーベイには,研究デザインの詳細が適切に練り上げられていないのに.実施されてしまうという危険があります。

 

たとえば,2つ3つの問いを急ごしらえして,容易に接触できる人たちだけに質問紙を配ってしまうというようなこともありうるのです。

 

性急に行なわれたサーベイは、サンプルがどのように選ばれ,測定がどのように行なわれたかをほとんど記述していないことが多いのです。

 

通例,そのようなサーベイは予備的研究が行なわれたことを示す記述がないのも特徴です。

 

もう一つの危険な兆候は、研究参加への最初の呼びかけに応じなかった対象者に再度接触をしようという努力が行なわれた形跡がないことです。

 

鍵となる知見の性質もこれにより異なってきます。

 

繊細な問題や微妙な問題についての研究であるならば、方法のセクションで質問がどのように開発され検証されたのかが説明されているはずです。

 

身体計測を行なったのならば、測定条件を標準化するために取られた過程が記述されていなければなりません。

 

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