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医療統計学的論文の読み方:研究論文について問われるべき問い2

 

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医療統計学的論文の読み方:研究論文について問われるべき問い2

 


研究方法に関わりなく、すべての研究論文について問われるべき問いがあります。

 

これらの一連の問いはチェックリストの一部となりますが、それぞれ必要な理由があります。

 

公表論文で提示される情報の順序に従って,これらの問いを並べると以下のようになります。

 

統計的有意性を判定しているか
主たる知見は何を意味するのか
有意でない知見をどのように解釈しているか
重要な効果を見過ごしていないか
結果は先行研究とくらべてどうか
自分の実務にとって,研究結果はどのような意義があるか

 

統計的有意性を判定しているか

 

すべての研究結果は,偶然の作用に影響を受けています。

 

特にサンプルサイズが小さいときには,偶然の影響が極 めて大きく見えることがあります。

 

それゆえ,主たる結果について統計的有意性を判定しなければなりません。

 

p値が0.05 より小さいということは,分析結果が偶然によって生じたのではなく.本物であるというよい証拠になります。

 

pく0.01 やpく0.001のようにp値がさらに小さければ,結果が偶然のせいではないことを一層強く確信できます。

 

医学系雑誌の多くは、p値より信頼区間を好みます。

 

信頼区間は.統計的有意性を検定できるだけでなく,それ以外の情報も与えます。

 

信頼区間は,真の値が存在しうる範囲を示します。

 

その範囲によって,まさに真の効果がどのくらい大きいのか,あるいは小さいのかを知ることができます。

 

さらに,この範囲が広い場合には,推定された効果の大きさの意味に疑問が生じます。

 

主たる知見は何を意味するのか

 

研究の知見の解釈には,標準的な順序があります。

 

まず,報告された効果サイズを一つひとつ綿密に調べて,臨床的に重要かどうかを見ます。

 

統計的有意性は.必ずしも,臨床的意義があるかどうかを知るための有用な手がかりとはなりません。

 

しかし,信頼区間は.真の値がありそうな範囲を示してくれるので,役に立つことがあります。

 

次いで,研究デザイン・実施内容・データ分析中にあった欠陥と鍵となる知見を突き合わせます。

 

こうすることで読者は,情報に基づいて,研究が実際に何を示したのかを判断できます。

 

研究者は.厳密に正当化できる以上に,自分たちの見出した結果を強調して,著者の結論をつねに信頼できるわけではありません。

 

安易に信頼せずに,生じうるバイアスや交絡がないかどうか注意深く調べるべきです。

 

研究に内的一貫性があるとき,つまり年齢別や性別などサブグループにデータを分割しても.同様の結果が得られるとき,知見は一層信頼できます。

 

また、たとえば中くらいの曝露が,低レベルの曝露と高レベルの曝露の間の中間的なリスクをもたらすという用量-反応関係のような,裏付けとなるエビデンスがあれば、結果が偶然のもたらした例外ではない可能性が高くなります。

 

最後に結果がもっともらしいか?生物学的に了解可能か、その病気について知られていることと合致するか,できごとが発生したタイミングは納得できるか?を評価します。

 

読者は,著者の解釈をそのまま受け入れるのでなく,結果を熟考して,自分の目で見てもっともらしいかどうかを判断しなければなりません。

 

研究の知見の解釈とは.経験の助けを得て行なう判断です。

 

解釈の過程は主観的であり,よって完璧なものではないこともあります。

 

しかし,完璧ではないとしても,結果を額面通り受動的に受け入れるよりはよいです。

 

有意でない知見をどのように解釈しているか

 

たとえば、従来の治療法以上の効果がないと分かった新しい治療法のように、有意でない知見(null findings)は,特に注意して解釈する必要があります。

 

結果が有意にならない一つの理由は、研究の規模が小さすぎて効果を検出する可能性が十分にないからです。

 

信頼区間の範囲が広いとき,たとえば,臨床試験において.新しい治療法のほうが従来の治療法に比べてずっと優れているところからずっと劣っているところまでの範囲を,信頼区間がカバーしている場合がそうです。

 

また,結果が有意にならないもう一つの理由は,研究デザインあるいは実施に欠点があるからです。

 

どんな説明がなされていようと,連関(たとえば効果)があるというエビデンスがないことは連関がないというエビデンスがあることを意味しません。

 

重要な効果を見過ごしていないか

 

研究者には,ある無理からぬ傾向があります。

 

自分の予想と一致する結果に目を向けさせようとする傾向です。

 

研究者の見解と一致しない結果や,あるいははっきりと矛盾する結果には,触れてさえいないことがときどきあります。

 

そのため,たとえ.有意でない知見であっても,研究者が触れていない興味深い知見を探してみるべきです。

 

結果は先行研究とくらべてどうか

 

1件だけの研究から得られた知見が,説得力のあるエビデンスをもたらすことはほとんどありません。

 

新しい知見は.通常,できれば2つ以上の研究グループによる何件かの研究を含む,十分な量の研究の積み重ねがあるときにだけ認められます。

 

他の研究グループにとって,結果を確証するのが難しかったと考えられる場合には,信頼は損なわれます。

 

したがって,いかなる研究における知見も,先行研究を踏まえて解釈する必要があります。

 

論文に自分自身の知見を支持する研究を引用したとしても,これらの研究によって,知見が確証されるわけではありません。

 

自分自身の知見を支持する先行研究の知見を誇張したくなる著者もいるかもしれませんし,矛盾する知見に言及することを怠る著者がいるかもしれません。

 

そのようなことはせずに、一つの報告からの知見は、すべての先行研究からなるバランスの取れた全体像のなかに収める必要があります。

 

しかし,ある特定の分野には,專門家が数人しかいないことが多いので,これが可能であることは少ないです。

 

だからといって、特定の分野に精通していない読者ほど,1件だけの論文の主張を受け入れることには,慎重でなければなりません。

 

自分の実務にとつて研究結果はどのような意義があるか

 

おそらく論文を精査するときに最も重要なのは,論文に基づいて自分の患者の取り扱いを変えるべきかどうかという問題です。

 

それは,患者に役に立たない治療法を受けさせるのか,それとも.効果的な治療法を受ける機会を与えないのか.という判断のこともあれば,不安感を与えるのは承知で有害な行為をしないように患者にアドバイスするのか.それともしないのか,という判断のこともあります。

 

最初に,効果はどのくらい大きかったか、そしてそれは臨床上重要であるかを問わなければなりません。

 

次いで、知見が真実らしいかを知るために、判断を支持するエビデンスとともに,研究の質を評価しなければなりません。

 

最後に,被験者が自分の患者と似ているかどうか,研究の実施条件が自分の状況と似ているかどうかを問うことで,研究結果と自分の実務との関連性を再検討しなければなりません。

 

そうすることで,自分の患者にも同じくらいの効果が得られそうかどうかが分かるはずです。

 

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